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(社) 日本建築家協会   北海道支部 広報
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JIA建築セミナー2008報告
JIA建築セミナー2008報告 教育委員会 金山征晴

テーマ   ふじようちえん
講師    手塚貴晴 手塚建築研究所
日時    2008年10月29日(水)18:30
場所    STVホール
主催    日本建築家協会北海道支部
後援    株式会社エービーシー商会札幌営業所

 今回の建築セミナーは近美展のあった昨年のお休みもあって、3年ぶりの開催となりました。会場もアーバンホールが閉鎖となり、はじめてのSTVホールでのセミナーということで、どの程度会場が埋まってくれるか心配しましたが、評判の高い講師の力もあって、大勢の人々が席を埋めてくれました。担当委員会としては、まずは胸をなでおろすことになりました。

 手塚氏は秋も深まる北国の気候をものともせず、長袖シャツのみの軽装で現れましたが、それも暑いと言って半袖1枚になっての熱演でした。まずは今日の講演がご夫婦でなく一人になったことの説明とお詫び、トレードマークともいえる青いシャツによる日常を解説しながら、さりげなく「屋根の家」の話へと入って行きました。「屋根の家」はオーナーとの対話の中で誘われる様に設計者を導いたかのように、つまり意志のすり合わせの苦労もなく作品が自然に形作られて行ったかの如く語っていきました。屋根の上で生活するという一見奇抜な発想をいかにも自然の成り行きで形成されて行ったのかと、聞くものを印象付けていたように思います。

 手塚氏によると、本題「ふじようちえん」に入る前に「屋根の家」について話す必要があるとのことでしたが、本題に入って確かに同じように話は進んで行きました。園長先生は、600人の子供が上がる屋根がほしい。手すりはないほうがよい。つけるならあまり頑丈でなくふわふわと柔らかいほうが良い。子供は多少怪我しても大丈夫。平面は円いほうが園内をくまなく見回ることができる。子供もぐるぐる回るのが好き。常識をちょっと逸脱したかのような園長先生の話は続きます。それを設計者の弁が追いかけます。木の根を守るため柱は不規則な配置になった。屋根は中庭からよく見えるように低く(常識的には低すぎ)そして中庭側に緩やかに傾いている。隣のクラスとの間仕切りはないほうが、子供は集中力を養うことができる。近代的な足洗い場は子供が(面白がって)泥を詰めてしまうので、たらいに水を張って使う。そのたたきはコンクリートでなく地面に木レンガを埋め込んだ床(排水口はいらないということ)。天窓は子供が上がって遊ぶので網を張った。中庭の芝は牧草を混ぜて、そのままでは伸びすぎると言って山羊を3頭飼った。屋根の上を毎朝30周する子がいる。距離にして5~6㎞。次から次へと、そんな幼稚園があれば楽しいだろうに、と思われることが現実の話として飛び出してくる。時間は瞬く間に過ぎてしまいました。

 質疑の時間となり、いくつかの応答ののち司会の遠藤幹事長の質問に、椅子を自分で用意してここで対談にしましょうと言いだすハプニングに、幹事長もさすがに戸惑いながらもにわか対談となりました。クライアントとの意志のすり合わせの話になったとき、ライフスタイルの合わないクライアントには他の建築家を薦める。しばらく付き合ってから契約してくださいという。という言葉に改めて納得。

 最後に若い人に向けて、建築家は体力勝負。体育会系の人が多いのです。心も体も丈夫でなければ生き残れない。そして自分の目で様々な建築を世界中見て歩きなさい。とエールを送ってセミナーは終了しました。楽しく有益なお話をありがとうございました。そのあとは有志による交歓会もあり、秋の夜長もゆっくりと更けてゆきました。
by hokkaido-jia | 2009-03-01 00:08 | 北の建築家たち Vol.65
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